仮想通貨決済の導入を検討する企業にとって、「自社でベンダーを使って仮想通貨決済システムを構築する」か、「外資系の決済代行サービスを利用する」かという選択は大きな分岐点です。それぞれに固有のメリットとデメリットがあり、どちらを選択するかは、事業の目的、リソース、長期的なビジョンに大きく影響します。
本記事では、仮想通貨決済を導入する際のこの2つの選択肢を詳しく比較し、それぞれの選択がどのような企業に適しているのかについて解説します。
1. 自社でベンダーを使ってシステム構築する場合
まず、自社で仮想通貨決済システムを構築する方法について見ていきましょう。自社でシステムを構築するというのは、仮想通貨決済に関してフルコントロールを持ちたい企業にとっては魅力的な選択肢です。この方法では、外部のベンダーと協力して、自社のニーズに完全にカスタマイズされたシステムを作り上げることが可能です。
メリット
- カスタマイズの自由度
自社でシステムを構築する最大のメリットは、システム全体を自社のビジネスに完全に最適化できることです。例えば、特定の仮想通貨のみを受け入れたい場合や、独自の手数料設定や決済フローを構築したい場合でも、自由にカスタマイズできます。また、機能の追加や変更も自社の判断で行えるため、柔軟な運用が可能です。 - 長期的なコスト削減
初期導入コストは高くつくかもしれませんが、長期的には外部の決済代行サービスに支払う手数料を削減できる可能性があります。特に取引量が増加すれば増加するほど、手数料負担が軽減されるため、自社システムでの運用はコストメリットをもたらします。 - セキュリティのコントロール
セキュリティに敏感な企業にとって、自社でセキュリティ対策を講じられるという点も大きな利点です。外部のシステムに依存することなく、自社のポリシーに従ったセキュリティ対策が可能であり、セキュリティの強化や保守管理も自社の手で行えます。
デメリット
- 初期導入コストの高さ
システムをゼロから構築するため、初期費用は大きくなります。開発コスト、インフラ構築、セキュリティ対策など、仮想通貨決済システムの導入には多額の費用がかかることがあります。中小企業にとって、このコストは大きな負担となる可能性があります。 - 技術的な維持管理の負担
システムのメンテナンスやトラブル対応は、すべて自社で行わなければなりません。仮想通貨は技術的に複雑な領域であり、セキュリティリスクやアップデート対応など、常に技術者の手が必要です。専任のITチームがない企業にとっては、この負担が大きくなることがあります。 - スケールアップの困難さ
自社でのシステム構築は、システムが成長するにつれてスケールアップが難しくなる場合があります。新しい通貨や決済機能を追加する際、再度システムを拡張する必要があり、その度にコストと時間がかかる可能性があります。
2. 外資系決済代行サービスを利用する場合
次に、外資系の決済代行サービスを利用する場合について見ていきます。外資系の決済代行サービスは、すでに準備された決済プラットフォームを活用し、簡単に仮想通貨決済を導入するための手段です。これにより、導入スピードが速く、技術的な知識が不要であるため、多くの企業にとって手軽な選択肢となります。
メリット
- 導入の迅速さ
外資系の決済代行サービスを利用することで、数日から数週間で仮想通貨決済を導入することが可能です。システムの構築やインフラ準備を行う必要がなく、外部のプラットフォームをそのまま利用できるため、導入が非常にスムーズです。 - 低コストで始められる
自社でシステムを構築するのに比べ、初期投資が少なく済むのが大きな魅力です。決済代行サービスでは、主に取引ごとに手数料を支払う形になりますが、初期費用や維持費は大幅に抑えられます。特に中小企業にとって、この点は重要です。 - 技術的なサポートが充実している
仮想通貨に関する技術やセキュリティに精通していなくても、決済代行サービスがそれをカバーしてくれます。システムの更新や障害対応、セキュリティの維持は外部の業者が行うため、自社で技術的なサポート体制を持つ必要はありません。
デメリット
- 手数料がかかる
外資系の決済代行サービスを利用する際には、取引ごとに一定の手数料が発生します。初期費用が低い一方で、取引が増えるにつれて手数料の負担が大きくなり、長期的に見るとコストがかさむ可能性があります。特に、大規模な取引が日常的に行われる企業では、手数料が利益を圧迫することもあります。 - カスタマイズの制限
決済代行サービスは既成のプラットフォームを利用するため、カスタマイズの自由度が限られています。自社独自のニーズや要件に合ったシステムを構築したい場合、柔軟な対応が難しくなる可能性があります。また、決済代行業者の仕様に従わなければならないため、自由度が制限されることがあります。 - 外資系企業への依存
外資系のサービスを利用する場合、その国の法規制や企業の方針変更に左右されるリスクがあります。例えば、サービス提供元の国の法律変更や方針転換により、急なサービス停止や手数料変更が行われる可能性があります。自社でコントロールできない部分があるため、その点はリスク要素となります。
3. どちらを選ぶべきか？決定のためのガイドライン
企業がどちらを選択するべきかは、その企業の規模や目的、長期的な戦略に依存します。以下に、選択のためのガイドラインをまとめます。
- 短期間で仮想通貨決済を導入したい場合
時間がない、または技術的なリソースが限られている場合は、外資系決済代行サービスの利用が最適です。導入が迅速であり、初期コストを抑えることができ、技術サポートも受けられます。中小企業やスタートアップに特に適しています。 - 長期的にコストを抑え、柔軟に運用したい場合
自社でベンダーを利用してシステムを構築することが有効です。初期コストは高くなりますが、長期的には手数料の負担が減り、カスタマイズ性も高いため、自社のニーズに完全に合わせたシステムを運用することができます。特に、大規模な取引を行う企業にとっては、この選択肢が最適です。 - セキュリティやリスク管理が重要な企業
セキュリティに非常に敏感な業種や企業であれば、自社でのシステム構築を検討するべきです。自社でセキュリティポリシーを策定し、外部依存を避けることで、リスク管理を徹底することができます。
まとめ
仮想通貨決済システムの導入は、企業にとって大きな転換点となり得ます。自社でのシステム構築か、外資系決済代行サービスの利用か、それぞれにメリットとデメリットがありますが、企業の状況に応じて最適な選択を行うことが重要です。
